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さあ、才能(じぶん)に目覚めよう

さあ、才能(じぶん)に目覚めよう―あなたの5つの強みを見出し、活かす

大抵の企業では、業務で優秀な成績を上げた人からどんどん昇進していき、その結果その人の能力が生かせなくなってしまうという事態が常に起こっています。これは一般的に「無能の壁」と呼ばれていて、それが起こる理由も、その弊害も認識されています。しかし、的確な処方箋が見つかっていなかったのがこれまででした。

本書は、 その問題に対して極めて科学的なアプローチで取り組み、一つの指針を示すことに成功しています。

本書では”才能”というものを

無意識に繰り返される思考、感情、行動のパターンである。

と定義しています。これはとても意外です。普段私たちは”才能”と聞けば、その人に与えられた唯一無二の能力のようなものを想像してしまいますが、どちらかと言えば生活習慣や癖に近い(もっと根本的なことであることは本書を読めばわかりますが)ことだという発想は今まで全くありませんでした。

更に、”才能”というものを定義した上で

  1. “才能”を34種類に分類
  2. 自己の持つ才能の確認
  3. 才能の生かし方(自他共に)

という順番で言及していきます。

才能を表現する34の言葉を知った後では、自分が何如に”才能”に対して表現する言葉を持っていなかったのかということを痛感させられます。試しに、自分が思いつく言葉をあげてみてください。5,6個、せいぜい10個ぐらいでしょう。

私も分類テストを受けてみたところ、こんな結果でした。

  1. 親密性
  2. 学習欲
  3. 着想
  4. 収集心
  5. 内省

なるほどな、と(笑。落ち着いた感じのする結果でしょうか。

才能が分類された後で、前述の「 無能の壁」を振り返ると、もう溜息しかでません。それぐらい、今まで経験的には何となく判っていたけれどもモヤモヤしていたものが晴れる感じがします。

“34個もあったら覚えきれない!!”と思うかもしれませんが、自分が持っている才能が何なのか、自分の(そして他人の)才能を生かすとはどういうことなのかを理解するだけでも一読の価値があります。

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あたらしい戦略の教科書

あたらしい戦略の教科書
はじめての課長の教科書に続く、「あたらしい戦略の教科書」が届いたので、早速読んでみました。課長の教科書も目からウロコがボロボロと落ちてくる内容でしたが、今回も負けず劣らずすぐにでも実践していきたいと思える内容ばかりギッシリと詰まった一冊になっています。

本書でも取り上げられている”戦略における完璧主義のワナ”は、私も常々悩まされている問題です。私の場合は”現在地も目的地もルートもわかっているのに進めない”という状況に陥ってしまいがちでした。そこから前進するための”戦略”を立て、実行するための力が弱いため、いつもそこを突破できず、悶々とすることが多かったのです。

しかし本書を読み進めるにつれて、自分に何が足りなかったのかが手にとるように判るようになってきました。結果的には何もかもが足りていなかったんだなと反省することになったんですが。

まず第一歩として

  • 「タイプ分け」を意識する(因みに私は専制君主タイプみたいです。自分でも意外!)
  • 組織トップのコミットメントのマネジメントする
  • 情熱の伝染を起こす
  • 戦略の実行に反対する人への対応のしかたを考える

ということを意識していきたいです。

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はじめての課長の教科書

はじめての課長の教科書

書評ではなく”書評Blog”評をしただけにも関わらず、著者のNED-WLTさんからもコメントを頂いてしまった本書が今日届いたので、早速読んでみました。

内容は既に紹介した “あなたの会社の課長はどう?成長する会社の課長の役割十箇条” に素晴らしい形でまとめられているのでそちらを参考にした方がいいのですが(笑、ここで注目されている課長の役割 10箇条」以外にも興味を引かれる部分がありました。

それは、課長になった人がその後どうすればいいか?というキャリアプランについての記述です。10箇条が自分以外の人に向けた行動なのに対し、キャリアプランに関しては自分をどうするか?という自分に向けた問いかけと言えます。

そして、このキャリアプランを考えるための戦略を考える記述を読んだ時、本書が表面的な “あるべき論” に終始する理想の “課長” 像を追いかけるだけでなく、現実の清濁併せ持ったリアルな課長の為の本だということを実感する事ができました。

課長になった人が “次” を目指すときの目標として

  • 部長(追記:肝心のコレを忘れていました!!)
  • 課長
  • 転職
  • 起業

という具体的な四つを上げ、そこを目指すためには何をすべきか、社内政治や人脈の使い方といった泥臭い話にまで言及していたのが生々しいです。同時に、こういった生々しい事の隅々まで気を配る事ができて、”プロ課長” と言えるんだろうなというのも実感させてくれる一冊です。

前回紹介した書評だけでも一読の価値があると思っていましたが、実際に手に取って読んでみて、更にその気持ちが強くなりました。世の中の課長さん、そして課長さんと関わる人、必読です!!

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ちょいデキ!

ちょいデキ! (文春新書 591)

北斗神拳のごとき達人仕事術より、誰でもできる太極拳的仕事術を

会社に朝早く行くのもダルい、ムダな仕事はできるだけしたくない、残業なんてしないでサッサと帰りたいと思ってばかりのユルユル(ここまで行くとダメ人間?)な私も本書を読みながら思わず「そうそうそう!!」と頷いてしまいました。

ユルい語り口で語られている内容も、よくよく見れば普通のビジネス書に書いてあるものとそれほど違いはありません。でも、ちょっと視点が違うだけでこれほどまで気楽にできるのか!!と驚くほど、肩の力の入り方が違います。

北斗神拳なんか扱えない凡人の私でも、「壮大な目標は立てない、どうでもいい事からでもいいから、とりあえず何かをしてみる(“コーヒーをいれる”でもいいんだよ!)、大きな目標より小さな目標を立ててちょっとづつやろうよ」なんて語られたら実践せずにはいられません。

この記事も、”五分後の自分”を夢見ながらコーヒーを飲んでから書き始めました。これでちょいデキ!に一歩近づけたわけですから、カンタンカンタン!

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効率が10倍アップする新・知的生産術—自分をグーグル化する方法

効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法前回のエントリに続いて、勝間和代氏の著書の紹介です。本書は流れ的には年収10倍シリーズの後に続くものとなります。

実は、本書が出た時には”さすがに三匹目のドジョウはどうなんだろう?”と思っていました。ところがどうして、同じ事柄の焼き直しかと思いきやとんでもない!!完全に侮っていました。

年収10倍シリーズは勉強するためのテクニックに重点が置かれた構成になっていたのですが、本書では勝間氏がなぜ、そしてどのようにして自身の知的生産性を向上させてきたのか、氏のベースになっている考え方やアイデアまで含めて包み隠さず書き記されています。

特に私が気になったのは氏が「フレームワーク力」や「ディープスマート力」を身につける事になった経緯とその手段でした。私も何となく聞きかじりや勘でフレームワーク的な情報処理や伝達をする事はあったものの、はっきりと技術として意識をした事は一度もありませんでした。ところが、

「マッキンゼーで、フレームワークのない会話なんて、主婦やサラリーマンのおしゃべりと同じだよね」

とまで言われているフレームワークに焦点を当てて振り返ってみると、これまでも会議中にお互いの会話が噛み合なかったり誤解を生じる場面に突き当たった時などフレームワーク力が足りなかったのではないか?と思える事が多々あります。

この件に限らず、本書は何度も読み返して一つづつ自分のものにする、言うなれば知的生産の為のリテラシーを磨いていくためにすばらしい道しるべになってくれること請け合いです。

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お金は銀行に預けるな

お金は銀行に預けるな   金融リテラシーの基本と実践 (光文社新書)年末年始読書記録第三弾。去年立て続けに本を出版して、そのどれもが大ヒットを飛ばした勝間和代氏の”お金は銀行に預けるな”です。

本書は”金融リテラシー”という、普通の人がちょっと目にしただけで全速力で逃げ出してしまいそうなムズカシそうな話題を実例を交えながら簡単な言葉でわかりやすく説明しています。

説明するに限らず、読者が本書を片手にいろいろな情報にあたり、自分の目で見て頭で考えるための手がかりを与えてくれているのが本書の大きな特徴です。

新書なのでザーッと読み流すだけなら1,2時間もかからない分量ですが、本書で示されている生の情報に当たって、自分で考えているとどれだけ時間があっても足りない気がしてきます。実際、私も一度流し読みした後に半日かけて情報をたどって見ましたが、それだけでも新鮮な刺激を感じることができました。

更に後半に進んで実践編に進むと、まるで目の前に勝間氏本人がいて、直々に指導を受けているんじゃないかと思えるような 濃密なカリキュラム(そう、カリキュラムなのです!)が組まれています。さすがにこれは半年~数年、数十年と続く課題なのですぐにこなすことができないので、徐々に身につけていきたいと思っています。

本書を読んですぐに金融リテラシーが身につくわけがないのは当然としても、自分で情報にあたり、自分で考えて、時にはチョット痛い目に遭って、その時にまた考えていくことを繰り返せば近い将来必ず自分の血となり肉となることを感じさせる一冊です。

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労働法のキモが2時間でわかる本

労働法のキモが2時間でわかる本正月休み読本第二弾はこの本です。正月からこういうネタってどうよ!?と自分で思わなくもないですが、読んでしまった上にタメになるんだから仕方がない(笑。

私自身、ロウドウホウのロの字も知らない労働者で、会社の就業規則は一通り目を通すものの、それがきちんと法律に裏打ちされた制度なのかどうなのか判断することができなかった人の一人です。

正直な話、今の職場でも運用上かなり問題あるんじゃないの?と疑問に思うことが多かったり、そもそも就業規則に記載されている事項ですらかなり灰色な感じのする項目があるとは思っていたものの、それをどうしたらいいのか?という疑問の答えは全く見当がつかないまま今まで過ごしていました。

そういった問題に対してどこから手をつけたらいいのか、足がかりすら掴みづらい労働関係の法律をより身近に感じて、「あれ?そういえばウチのアレはどうなの?」といった疑問を持つきっかけにするにはとてもいい本です。

それと、この本を読んで思ったこと。この本が社員の机のほとんどに置いてあったら、それだけでちょっとした抑止力になるんじゃないでしょうか。無茶な労働を強制される職場環境は、意識の低い会社だけの問題ではなく、それを問題にしない職場の問題でもあるんですから。

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ウェブ時代をゆく

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書 687)あけましておめでとうございます。数年ぶりに再開したBlogも更新が滞り、気づいたら年が明けてしまいました(汗。今年はもっとコンスタントに更新していきたいと思います。

今年最初のエントリーはこの本です。実家に帰省した年末、することもなくて暇だし本でも読もうかと思って書店で手に取ったのがこの本でした。

梅田望夫氏は前作の ウェブ進化論が出版される前から”熱い人だなぁ”と注目をしていたのですが、進化論で熱に当たりすぎたのとBlogのコメント欄で無駄に語りたがる人が増殖したこと、それから当のBlogで将棋ネタが増えてしまってわたしがついていけなくなったなどあって、この一年弱はあまり熱心にウォッチしていませんでした。

そういうこともあって、各所で本書が絶賛されているものを目にしても手に取ってみようという気が起きなかったんです。

今回読もうと思ったのもちょっとした気まぐれといえばそれまでですが、この本は今読んで良かったと思える、すばらしいものでした。

読んだ後に胸の内に残る何ともいえない高揚感は進化論以上のものを感じます。非常に曖昧な概念やヴィジョンを扱っていた進化論と比較して、本書はより現実を見据え、今生きる私たちが何を目指せばいいのか、より地に足が着いた形で語りかけています。

本書が出版された直後、各所でキーワードになった「学習の高速道路と渋滞」を本書で再確認していると、目の前に広がる高速道路の先にわくわくすると共に、後ろから猛スピードで追いつき追い越していく人たちの足音を感じずにはいられません。

一年の最後にこの本を読んで、自分が何をしていこうかと考えることができたのはとても素晴らしい経験でした。

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究極の会議

究極の会議

eXtreme Meeting(XM) という言葉を知っていますか?

会議を始めたのに、意見が出ない、まとまらない、そもそもこの会議の目的って何だっけ?など迷走した挙げ句不毛な時間を過ごしてしまったという経験がある人は多いと思います。むしろわたしの場合は、そんな会議しか参加した事がなかったりします(笑

XMはそんな会議を効率的・生産的な場にするための手法です。

eXtreme Meeting なんて聞くとすごく難しそうに感じるかもしれませんが、根っこのアイデアはたった一つ。「会議の目的を “議事録を作る事” と定義する」ということです。まず議事録ありきで会議を始め、議事録が完成した時点で会議を終らせます。こうする事で会議の目的を明確にして、参加者全員の共通の目標を定める事ができますよ、というのが XM の主張です。

そのXMの入門書が、今回紹介する “究極の会議” です。

わたしも所々で XM のエッセンスを織り込んで会議に臨む事もあるのですが、参加者全員の同意の下で本格的に取り組んだ事はまだありません。それでも最近は、いつまでたっても根回しとたらい回しをするばかりで一歩も進まない人たちを目の当たりにしているので、本腰を入れて布教活動をしようかと思っています。

そんな人には本書がオススメです。とても読みやすく書かれている上にボリュームも 150Pほどしかないので、手軽に XM について学習する事ができます。まずは本書で学習したあと、更に必要な部分を抜粋して布教活動用の資料を作るというのが XM 導入への足がかりとして最適です。

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未来を予測する技術

未来を予測する技術 (ソフトバンク新書 46) (ソフトバンク新書 46)

この本は、ステキです。読んだ感想はこの一言に尽きます。

著者の佐藤哲也氏は地球シミュレータセンター長として地球シミュレータの運営の陣頭指揮を取っている方だそうです(というのも、私はこの方の名前を知らなかった…お恥ずかしい…)。

この本を読み始めた時、最初の方はシミュレータとは全く関係のない事柄が延々と語られていたので”あれれ?”と思って読み進めていたのですが、この一文を読んだ瞬間に全てが一気に繋がりました。

地球シミュレータがまさにホリスティック(全的)であり、システムを「丸ごと」シミュレーションできる可能性を持っていたからである。(中略) デカルト以来の要素還元的考え方を覆す、画期的な道具と見たのだ。

地球シミュレータという命名を、今までは”それぐらいすごいんだよ!!”という意味でつけたんだろうなーと漠然と思っていたのですが、それはとんでもなく浅はかな思い違いだったようです。

確かに、この考え方は今までとは全く次元を超えたところにあります。

しかもこのシステムがすごいのが、核開発など軍事目的への使用は一切行われず、あくまでも”未来を映し出す望遠鏡”として活用することを使命としているところです。そんなスーパーコンピュータ、世界中を探しても他にないですよ!?

本書の後ろの方では、その使命を実行に移した成果を判りやすく披露するとともに、それでも尚残る問題点や、そもそもシミュレーションを行うという行為の限界点とそれらを乗り越えるための工夫が提示されています。

この部分を読んでいる間、ワクワクして仕方がありませんでした。この感覚はこの数年間完全に 忘れていました。本当に久しぶりです。

実のところ、今まで”地球シミュレータ”という余りにもストレートすぎる命名にはちょっとし小っ恥ずかしさも感じていたのですが、この本を読んだ後にはこれ以上ないとても素敵な名前に見えてきました。