この本は、ステキです。読んだ感想はこの一言に尽きます。
著者の佐藤哲也氏は地球シミュレータセンター長として地球シミュレータの運営の陣頭指揮を取っている方だそうです(というのも、私はこの方の名前を知らなかった…お恥ずかしい…)。
この本を読み始めた時、最初の方はシミュレータとは全く関係のない事柄が延々と語られていたので”あれれ?”と思って読み進めていたのですが、この一文を読んだ瞬間に全てが一気に繋がりました。
地球シミュレータがまさにホリスティック(全的)であり、システムを「丸ごと」シミュレーションできる可能性を持っていたからである。(中略) デカルト以来の要素還元的考え方を覆す、画期的な道具と見たのだ。
地球シミュレータという命名を、今までは”それぐらいすごいんだよ!!”という意味でつけたんだろうなーと漠然と思っていたのですが、それはとんでもなく浅はかな思い違いだったようです。
確かに、この考え方は今までとは全く次元を超えたところにあります。
しかもこのシステムがすごいのが、核開発など軍事目的への使用は一切行われず、あくまでも”未来を映し出す望遠鏡”として活用することを使命としているところです。そんなスーパーコンピュータ、世界中を探しても他にないですよ!?
本書の後ろの方では、その使命を実行に移した成果を判りやすく披露するとともに、それでも尚残る問題点や、そもそもシミュレーションを行うという行為の限界点とそれらを乗り越えるための工夫が提示されています。
この部分を読んでいる間、ワクワクして仕方がありませんでした。この感覚はこの数年間完全に 忘れていました。本当に久しぶりです。
実のところ、今まで”地球シミュレータ”という余りにもストレートすぎる命名にはちょっとし小っ恥ずかしさも感じていたのですが、この本を読んだ後にはこれ以上ないとても素敵な名前に見えてきました。